ボン書店の幻 モダニズム出版社の光と影
黒田維理、北園克衛といったモダニズム詩人たち。
その著作本の装丁の、まさに芸術と呼べるこだわり具合を知ってから、たどり着いたのがこの本。
かつて1冊の本を仕上げるのに、その美意識を究極なまでに駆使し、全身全霊をかけて生涯を捧げ、短命に終わった一人の名も無き詩人でもあり出版人でもあった鳥羽茂の足跡を追った「ボン書店の幻」。
北園克衛の「若いコロニイ」はボン書店の最初の刊行詩集だった。
まだ若くそう名前も知られていない新鋭たちの詩集をシンプルな、でも瀟洒な、センス溢れるスタイリッシュな形で生み出したのが鳥羽茂の感性であった。
これは白地社から1992年に出版されたものを2008年ちくま文庫で文庫化されたものであるため、文庫化にあたり初版時には掲載されていない「文庫版のための少し長いあとがき」が後ろに加筆されており、最初の出版後、著者が鳥羽茂の生涯を閉じた地・大分にその足跡を訪ねていく様が綴られている。
血縁者からさらにその素性が明らかにされ、そこで始めてその名前も「しげる」ではなく「いかし」という名前であることも判明する。
出版人、詩人。世間でどう呼ばれようと、私は彼が、名もなき一人の芸術魂を持ったアーティスト以上のなにものでもなかったと思う。
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